8/19 01:16 am Kamikatsu
⇄
8/18 18:16 pm Louisiana museum
スマートフォン越しに、あのゆったりした風景をなぞる。芝生に腰をかけ、丘の上から海を望む景色。
電車の遅延でようやく辿り着いたらしいルイジアナ美術館では、文学フェスティバルが開催されおりもうすぐ村上春樹がトークを行うらしい。彼は青いジャケットとオニツカタイガーのスニーカー、イッセイミヤケのズボンを装って、片手にはビールとサンドイッチを頬張りながら、ひと時を楽しんでいた。
そういえば、わたしも5年前のスウェーデン留学前に、デンマークへ立ち寄りルイジアナ美術館へ出かけた。車内のボックス席には、同じ目的地のおばあちゃんたちと居合わせた。1人の女性と会話をするなかで、チケットを譲ってもらった記憶が蘇る。その時も夏の文学フェスティバルをやっていて、日本人の作家と詩人が登壇していた。白熊が主人公の新作小説を手に取ったけれど、読み終わらず実家の本棚に残っているなあ。
新しい地に足を踏み込む緊張感と電車で出かけて新しいものに出会う好奇心。駅から住宅街の中を通り抜けて美術館まで歩いた景色、お家のエントランスのような受付と自然に溶け込む建築とアート。向こうの情景が、ベッドルームで寝転ぶわたしの中で広がる。日本とデンマーク、とおい国と国が記憶でつながっている。
Landscapes by Japanese painter Higashiyama Kaii (1908–99) from a new exhibition in Kyoto and Tokyo that features some 80 of his works.
地域おこし協力隊で島へやってきた方がはじめた古民家の宿。暑い中等着すると、冷たい水を用意してくれた。
湧水を汲むついでに豊島美術館で下ろしてもらう。夕方閉館近くの時間を選んだら、ほぼ貸切状態だった。
美術館までのアプローチは、木陰でセミの音が涼しく聞こえた。スーッと目線の先には海が広がっている。
–
トビが空を飛んでいる。上昇気流にのって、ゆっくりゆっくりまわっている。
外はまだ暑いけれど
そこは安心できる空間だった。
空気に溶け込む
ちいさな、変化
刻々と変わりゆく自然のなかで
わたしは気づけるだろうか。
ピュアなまなざしもって
世界と交わること。
か弱そうにみえる営みも
実はつよいことなのだと。
–
帰りはグリコをして坂道を下った。シャワーを浴びて、白ワインをいただく。おつまみには自家製ヴィーガンマヨネーズと、粒マスタードがアクセントに入ったポテトサラダ。
夕焼けを見に海へ歩くと、猫もいつもの場所で見ているそうだった。夕陽は山に隠れて見えなかったけれど、膝枕して海面に飛ぶ魚を数えながら平和な時間だった。
手づくりの夕食もこころが満たされるおいしさ。次の日の朝は、浜辺へ朝陽を見に出かけた
午後
豊島にいる知人にメッセージを送ったところ、突然の連絡にもかかわらず快く受け入れてくれ、『心臓音のアーカイブ』まで送ってくれることになった。彼と同い年の友人が車を出してくれた。いちごのクレープとソフトを頬張って、あたらしくできたエスポワールを見学させてもらう。急な来客に嫌な顔ひとつも見せず、おもてなしをしてくれた彼らに感謝の気持ちでいっぱいだ。
2年ぶりに訪れた『心臓音のアーカイブ』では、お互いに心臓音を録音した。5年前に録った音に比べて、ふたりとも着実にしっかりと地に足がついているような音がした。まだあの頃は付き合ったばかりで、ふわふわと踊っているような気持ちだったのだろうか。
“The sound of M, holds me gently.”
“My heart beats together with you.”
海は風のせいで揺らいでいたが、変わらず静かでうつくしかった。浜辺を少し歩いて、神社へお参りをしてから宿へと向かった。